湿原
ある知人が「湿原」を教えてくれたが、かの知人は、レ・ミゼラブルが愛読書だと言う人物だ。
するとこれは相当、手ごわい小説なんだろう。
図書館の閉架書庫から出してもらった加賀乙彦の「湿原」は上下巻。
長い小説はとっかかりが面白くないことが多いのだ。
しかし、「湿原」はのっけからスラスラ読めた。
北海道育ちの主人公の雪森厚夫は、子供の頃から窃盗癖があり、社会に出てからも累犯者。何度もの監獄生活を経たが、最後の罪を犯してからは、改心したように自動車工場で勤め上げ、小学校卒ながら工場長にまでなる。
こういう人が、美人でお父様がT大教授、でも思想がどうも過激な女子大生と、スケートリンクで知り合っている。
これはいい感じ・・・と思って、枕元に前置いて2晩読んでみた。
しかし、3晩目から、話が頭に入らなくなってきた(主人公雪森が工場長を務める会社の社長と、その秘書兼愛人と、雪森の義弟とで狩に出かける辺りから)。
もう、図書館に返しちゃおうか、でも、もう少しだけ読んでみよう、、と週末、手にとって見たら、突然、スラスラのスラ。
とんでもない出来事が起こる場面からが面白い。そこからは高速で読めます。
数十人もの人物が登場するが、人格描写が精巧で、一人ひとりがまるで自分もどこかで出会ったかと思うほど印象に残る。
最後まで最後が解らない。おちが想像できず、はらはらする。
小説を読んで、こんな気持ちになったのは、久しぶりだ。
by sitejm | 2008-01-14 16:49 | 読書も好きです(いろいろ)