Layer Cake
「下っ端チンピラから上層部ボスまで、裏社会の階層(レイヤー)をケーキにたとえた言葉。一番上は、おいしそうだが、この仕事、そんなに甘くない。」
以上、(株)ソニーピクチャーズのDVDの解説から。
この映画、想像以上に渋いですよ。
監督のマシュー・ヴォーンがしきりに、低予算で作った(400万£=今のレートだと5.7億円くらい)、とインタビューで答えているように、ハリウッド映画のような派手さは皆無。
でも、画面から目を離す間もないくらい。
工夫があるし、場面展開も速いし、観る側に頭を使わせる。
マシュー・ヴォーンは「スナッチ」の製作者だそうで、こちらの制作費は8~10億円ぐらいだそう。
「スナッチ」ではブラピが出ていたからですかね。
それと比べると、LayerCakeが低予算でできたのは、起用したダニエル・クレイグが007出演前で世界的にはそれほど有名でなかったからでしょう。
もしこれが、ハリウッド映画なら、クレイグでなくブラピでもいいかもしれません。
しかし、ブラピにはクレイグのような渋さはないですね。
さて、LayerCakeでのクレイグが演じるのは、主役の敏腕ビジネスマン。
一味違うのが、麻薬の売人ってところ。
暮らしぶりは裕福そうだけど、危険な仕事だということも良くわかっていて、一仕事終わったら、もう引退しようと思っている。
そんな折、有能ぶりに目をつけられ、ボスのジミーから、その知人の有力者のお嬢さんで、病院から逃げ出したコカイン中毒者を探し出す、という遂行困難なオファーを与えられる。
一方、ジミーから与えられた麻薬の方のビジネスでは、取引相手のせいで、クレイグ演じる主人公まで命を狙われる羽目に!
そのうえ、頼りにしている仲間まで暴力沙汰を起こして身を隠してしまい・・・主人公をとりまく状況はどんどん厳しくなっていくのです。
麻薬売人でありながらビジネスマンに徹していたため、暴力から縁遠かった主人公ですが、身を守るために銃を手に入れます。
レイヤー・ケーキでのクレイグは銃の扱いを全然知らないド素人。
そのため、「銃口は上に向けるもんだ!」と仲間から怒鳴られたり、銃口をのぞきこんで見たり、おもちゃをもつ子供そのもの。
で、すっかりその気になって、廊下を歩きながら、あるいは鏡の前で銃をカチャッ、カチャッと構えてみせるのです。
このシーンは、007シリーズで初めてダニエル・クレイグを知った人には面白いシーンだと思います。
DVDに収録された監督の解説入り映像でもマシュー・ヴォーンがこのシーンを見て、
「007に出るからかな?」と言っているのが笑えます。
さて、ここからかなりネタばれありますので、これからご覧になる方はご注意を!!
・・・「でも、人を撃つなんて・・・」と道徳心があった彼も、その銃を使う羽目に。
この後、主人公は人を殺したことで苦悩します。
鎮静剤をどれだけ飲んでも眠れない。
しかしそこは有能ビジネスマン。
一夜明けると、主人公は、スーツをびしーーっと着こなしてアタッシュケースを手に、颯爽と歩きだすんです。
この辺りは、「CasinoRoyale」で愛した女性を失い、「Quantum of Solace(慰めの報酬)」で失った悲しみと憎しみで自暴自棄になって、「Skyfall」では上司命令で谷底に撃ち落され死んだことになってまた復活した007を彷彿とさせました。
(↑写真だけ見たら、007のカットかと思いますもん。)
それと、この映画で初めて人を殺して苦悩する男を演じた後の映画が007カジノロワイヤルって、いうのもできすぎのような気がします。カジノ・・・の冒頭では、007は初めて一人殺った直後のシーンから始まるし。
・・・さて、根も葉もないことで恐ろしい殺し屋から命は狙われるわ、取引相手が隠したブツも探し出さなきゃならないし、信頼していた会計士に逃げられて破産するわ・・・・とんでもない窮地に陥る主人公がどんな知恵で復活するのか、で、最後はどうなるのか、、ついでにこの主人公の名前はなんていうのか(映画の最後までずっと名前が出てこない)、、、、
宣伝費も制作費もそれほどかけていなくても、存分に楽しめる、こういう映画が増えて欲しいものですわ。
by sitejm | 2013-01-06 21:04 | たまには映画を