暮らしの中のシドニー
著者の遠藤雅子さんは、1960年代、26歳で雑誌記者としてオーストラリアに渡ったのだそうです。
英語にも自信がなく、日本から豪州までの30日間の船旅で英語や西洋のマナーを習得。
今と違って、インターネットもないし、海外に行く人も多くはない時代、女性一人でナイフやフォークの使い方などのマナーも一から身に付けたのはご立派です。
この努力と度胸のご褒美なのか、その後のとんとん拍子振りがうらやましいくらい。
到着後、ホームステイしたお家の人が市長の関係者やメディアに知人があって、いつの間にやら市長の表敬訪問、その他のイベントでのスピーチがセッティングされ、豪州のどこへ行っても無料の航空券を与えられるなど、VIP並みの待遇を受けることに。
その後、今日に至るまで、彼女がオーストラリアで出会った人々や知ったこと、事件について、それらに胸をときめかせたり、おろおろしたり、少女のような感性でつづられています。
シドニーがなぜ「シドニー」と呼ばれるようになったのか、シドニーで食べるサンマの話、落第ではなく自主的に学年をやり直すという考え方など、知られざるオーストラリアの真実も興味深い。
とりわけ自分が気に入ったのは、著者が一人で貧乏バスで豪州を横断する話。
貧乏バスに乗っていた貧乏な?人たちは、旅の最後、最高にリッチな心の持ち主だったことが分かるのです。
オーストラリア人の誇る「mateship(メイトシップ)」を実感させるお話でした。
by sitejm | 2010-09-11 22:44 | 読書も好きです(いろいろ)