黒地の絵

 松本清張の小説はどれを読んでも面白いですね。
 しかし、すかーっと気持ちの晴れる物語はないと思います。
 「黒革の手帖」なんて、「すかっと系」かと思って読んだら、とんでもないですからね。
 
 作品が多すぎて好きな作品が選べないくらいですが、印象的な作品を選ぶとすると、「黒地の絵」です。
 これは、1950年、九州の小倉の米軍基地から多数の黒人兵が脱走し、民家を襲い、一家の妻を集団で強姦した事件が基になった小説です。
 私は、この物語を読んだとき、胸のうちで絶叫しました。
 犯された女性も、それを助けられなかった夫も、どちらもどれほど無念だったことか。
 
 ものを壊され、盗まれて一文無しになる方がどれほど気持ちが楽だったか。

 ここから少し、ネタばれになりますが、







 事件のせいで、夫婦は疎遠になり、離婚してしまいます。
 夫の方は無口な男になり、米軍兵士の死体を扱う現場で働くことになるのですが、ラストでは、妻を犯した男と同じ刺青のある兵士の背中を切り刻むのです。

 先日、記事をかいた「よじょう」の予譲の故事を彷彿としました。

 本当なら生きた男の身体を刃で貫きたかった気持ちは、予譲も、兵士の背中を切り刻んだ夫も同じだったのではないでしょうか。

 そして、私は先日、朝日新聞の「ひと」のコラムで読んだ記事を思い出します。

 沖縄で活動している歌手の男性の記事でした。
 沖縄が米軍基地に踏みにじられてきた悔しさを歌っている人だったかと思います。
 この記事にも、脱走兵たちに妻を犯された夫の話が書かれていました。
 夫は、米軍兵士が最後の一人となったとき、「ワイドー」(耐えろ)と叫んだそうです。
 この歌手の方は、これを美しい言葉だと評していました。

 私はそうは思いません。

 美しいですか?

 妻を犯されても、耐えろと応援した夫。それが美しいのかな?

 妻を犯されてもその人への愛情を失っていない夫は立派だ、といっているだけのように思えるけど。
 その夫が傷ついた妻を抱きしめて、一緒に生きたことを願います。
 妻の心を少しでも軽くしてあげながら。
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by sitejm | 2013-12-18 23:44 | 読書も好きです(いろいろ)