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【読書】銃

 日曜の暇つぶしに読む本を探していたら、中村文則という名前が目に入った。

 たくさん賞を取っている作家なので、記憶のどこかに引っかかっていたのだろう。

 まずは新潮新人賞をとった「銃」。

 大学生の主人公は、無気力というか、見た目いい子のなんだか暗いやつ。

 そんな彼が、ある日、銃を拾う。
 銃の横には、男の体が転がっていた。
 男は自殺したようだ。

 主人公の関心は銃だけにあった。

 彼は性欲だけは立派にあって、引っ掛けた名前も知らない女とやることだけはやる。
 
 警察に会えば、聞かれもしないのに、わざわざきわどいことを自分から問う。

 相手が困るような態度をとることも選択肢に常に入れているが、面倒だから、結局、楽な方を選び、その結果、相手が喜んでいれば素直に喜ぶ。

 相手の行動を必要以上に気にしているようで、自分がいつも主導権を握っている。もしくは握っていたい。

 大した事件の起こらないまま、主人公のテンション低めの行動に沿って、最後の最後で事件が起こってしまう。

 先日、「冷静なサイコ」という翻訳記事をこのブログに掲載した。

 サイコパスらは、普通の人の感覚と異常者の感覚を自分の意思で切り替えることができる、というネタだったが、この物語の主人公は、まさにそれかもしれない。

 そういう意味で現実的で興味深く思える一方、性的経験の少ない人が性描写をしたような、とってつけたように感じるところがあった。
 しかし、これがなかったら、一般ウケしないから、とってつけたのかも?

 と、読む人だから安易にケチをつけたけれど、このテンションの低さで最後まで一気に読まされてしまった。

 それで、すぐに同じ著者による「土の中の子供」を手に取った。 

by sitejm | 2013-08-04 21:57 | 読書も好きです(いろいろ)