殉職
亡くなった海女は71歳、83歳である。
年寄りが無理をして、と思われそうだが、無理も何も、彼女らは超のつくベテランの海女であった。
海女の高齢化は全国各地で珍しいことではない。
三重県内のとある町の海女の年齢構成は、
50代 18.7%
60代 34%
70代 34.7%
80代 1.3%
であり、50歳以上の海女の占める割合が全体で9割近くを占めるのである。
こうした現状の裏には、言うまでもなく、後継者不足がある。
10m以上もの海底に一人で潜る海女の作業は、孤独であり、危険である。
潜水服の紐が海草に巻きついて取れなくなったり、岩穴から手が抜けなくなることもあるという。
昔、若者が嫌う仕事、「きつい」「危険」「汚い」をあらわすのに3Kという言葉があったが、海女の仕事は決して「汚い」わけではないが、これが「孤独」に置き換われば、ぴったり3Kとなる。
海女の3Kは今に始まったわけではない。かつてから、厳しい自然の中で行うつらい仕事であった。
以下、28歳の若さで亡くなった志摩市(旧阿児町甲賀)の海女、浜口長生の「漁民悲歌」の一部である。
彼女は、堕胎後わずか2時間で、生計のため、3月の海に潜った。
きょうはバカに潮が身に痛い。
磯着が重い。
底が遠い。
岩に脚が辷る。
若布が強く揺れる。
身体も揺れる。
鎌の穂先も定まらぬ
・・・・・・・
三代目歌川豊國 二見浦海女鮑取之図
by sitejm | 2005-07-10 20:31 | 統計